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とわいらいと 1

2010/06/24 02:01 - | Comment:0 | Trackback:0
君の演奏には魂がこもっていた。

 それは決して、技術的に優れているという訳ではなかった。
 難しい指になると、走ってどんどん加速していくし、
 間違うし、落ちてしまうことも珍しくなかった。

 途中であきらめて、演奏をやめてしまうことだってあった。

 それでも君は、
 相手に「あいつ、上手いな」と心から思わせるような
 そんな演奏をする子だった。


「魂をこめて弾いているから」と
半分は照れ隠しで、半分は本気で話してくれた。


君がお気に入りの曲を、2人で演奏することになったとき、
君は私に「私は波で、のっこはストーリーテラーだからね」と言った。


 夕暮れ時の航海の曲。
 君の奏でる音は本当に波のように聞こえた。
 
 本番、君の演奏は決して完璧ではなかったにも関わらず、
 周囲が息をのんで君の音に耳を傾け、君の演奏は上手だと言った。
 私も、正直すごいと思った。


大切な人が目の前にいるようなつもりで弾くんだ、と君は教えてくれた。

 
 君の演奏に見合うようになりたいと、ずっと思い続けていた。
 私は船に乗る少年の心を音に乗せて表しているんだ、と自分に言い聞かせた。
 どうすれば情景をイメージできるのかなんてさっぱり分からなかった。
 けど、とにかくイメージし続けた。

 情景を思い描けず君に失望されるのがいやだったし、
 自分の才能のなさを認めるのも嫌だった。


技術も、知識も、感性も追いつかなくて、
結局、君と演奏にできる環境にあるうちは
上手く演奏することができなかったな、と思う。


 また、前と同じように演奏できたらいいのに、って今でも思う。
 でも君は、昔みたいにはできないよ、とか、準備するのが面倒だよ
 とか言って結局、演奏には付き合ってくれなかった。

演奏できる相手がいない今、さびしいなって、正直ちょっと思う。


でも、なんとなく、分かる気もするんだ。
もうあの時のようには、演奏できないんだってこと。

それは、技術の衰え云々以上に
変わってしまったもの。
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